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ソマティック・エクスペリエンシング

ソマティック・エクスペリエンシングという言葉を聞いたことがあるでしょうか。

主に、恐怖体験によるフラッシュバック、パニック障害、不眠などに悩んでいる方のためのトラウマ療法です。

開発者は、アメリカの神経生理学者・心理学者のピーター・ラヴィーン博士。

このトラウマ療法のしくみは、博士自身の事故体験でも実証されており、素人ながらも納得のいく療法だと思えました。

ソマティック・エクスペリエンシングは、トラウマ治療法の選択肢の一つになると思います。

トラウマが作られる過程

トラウマとは

トラウマとは、衝撃的な恐怖体験が原因で起きる心の傷のことです。

体験そのものを〝外傷体験〟と呼び、外傷体験の記憶のことを〝トラウマ(心的外傷)〟といいます。

トラウマは、本人の意思に反して不意に思い出され(フラッシュバック)、恐怖を再体験します。

この状態が繰り返され、日常生活に支障をきたすのが、PTSD(心的外傷後ストレス障害)です。

野生動物がトラウマにならない理由

人間は、死を覚悟するような恐怖を感じた場合、トラウマになります。

ですが、捕食動物に襲われて恐怖を感じる野生動物は、決してトラウマにはなりません。

同じ動物なのになぜ違うのでしょう。

本来動物は、自然で本能的にエネルギーを解放する術を知っています。

野生動物は捕食動物に狙われていると察知した際、硬直(死んだふり)してエネルギーを貯めます。

動いている動物しか狙わない捕食動物の場合、隙を突いて逃げ出すことができるからです。

敵が襲ってくれば、闘争か逃走を選択しエネルギーを消費します。

ですが何もせず敵が立ち去れば、襲われた動物は硬直状態を解き、身震いをしてためこんだ過剰なエネルギーを解放するのです。

このプロセスこそが、動物が身に起こる脅威や危険を〝トラウマ〟として抱えずにすむことができる理由なのです。

これは原始的な脳による、本能に基づいた行動であり、野生動物は自然に行なっています。

人間がトラウマになる理由

人間も動物なので、本来は野生動物がするようなエネルギーの解放ができるはずです。

ですが、あまりにも発達した脳の知的部分(大脳新皮質)により、エネルギーの解放がなされないままなのです。

そのしくみを、簡単に説明します。

人間は、恐怖を感じると交感神経が極度に興奮し、体にエネルギーをため込みます。

これは「闘争か逃走」反応といい、緊急時に備えて身体がすぐ反応できるようにするためです。

闘争か逃走をすれば、ためこんだエネルギーは消費されますが、闘争も逃走もできなかった場合・・・

体は凍りつき(硬直し)、第三の選択肢である停止状態になります。

停止状態は、その瞬間の苦痛を感じずにすむというメリットがあります。

これは、意識が身体にとどまっているのがあまりに衝撃が強く危険な場合、苦痛を避けるために自動的に肉体から感覚を切り離した状態=解離(かいり)状態になることがあるからです。

交通事故に遭った人や性的虐待の被害者が、その出来事をはっきりと覚えていなかったりするのは、このせいです。

停止状態では、本来、解放されるべきだった過剰なエネルギーは、硬直が起こったままの状態で行き場を失います。

神経系の中で解放されず、蓄積されたままになってしまった過剰なエネルギー。

このエネルギーは解放されないまま、ずーっと身体の中に蓄積されたままです。

ラヴィーン博士は、この行き場を失って蓄積された過剰なエネルギーが、トラウマに起因する色々な症状を作り出していると考えたのです。

闘争か逃走反応

私たち動物が危機状態に面した時にとる行動が「闘争か逃走」反応です。

危険・恐怖・不安などに直面した際、まずは逃げることを試みますが、逃走が阻害された場合は闘争を選択します。

ですが、恐怖のあまり闘争ができない場合は、第三の選択肢である停止になります。

この「闘争か逃走」反応には、私たちの身体の自律神経(交換神経・副交感神経)が大きく関わっています。

活動時に働くのが交感神経、安静時に働くのが副交感神経だということは、ご存知だと思います。

この「闘争か逃走」反応が起こると交感神経が優位になり、血流や呼吸を促進し、エネルギー源を動員して集めます。

身体的な特徴としては、心拍数が上がる、血圧・血糖値の上昇、瞳孔が開くなどです。

そして、第三の選択肢である停止ですが、ラヴィーン博士は独自の見解で二種類あるとしています。

①麻痺して体が凍りつく

②圧倒的な無力感で脱力し崩れ落ちる

①は、衝撃的な事故や災害に遭遇した場合などです。

この場合は、状況の精査を行い、行動をおこす時があります。

災害回避のために物を動かしたり誰かを助けたりした時、闘争反応となり過剰エネルギーを解放します。

火事場の馬鹿力は、この過剰エネルギーの力です。

②は、虐待やイジメ、レイプの場合などです。

鎮痛状態では、被害者は自分の身体の外からその出来事を目撃しているかのように、あたかも誰か他の人間に起こっていることのように思われるのです。

これは、自分ではないと思い込むこと(解離)で苦痛を和らげ、時には無感覚になります。

状況の精査も行えないほど凍りつき、停止した状態となり、過剰エネルギーは神経系に蓄積されたままです。

トラウマの発生

トラウマを抱えている人は、不動状態です。

この不動状態は、体に過剰エネルギーが蓄積されている限り続きます。

なぜなら、エネルギーが蓄積されているということは、神経系の中では、不動状態となったきっかけの出来事はまだ終わっていないのです。

トラウマとは、不動状態に関わる身体感覚が呼び起こした恐怖に対する防衛反応のことです。

ソマティック・エクスペリエンシングによるトラウマの解放

恥・避難・不動状態のらせん

ソマティック・エクスペリエンシングで、不動状態から恐怖を分離することで、トラウマ反応を再燃させるフィードバックループを断ち切ることができるとしています。

フィードバックループとは、恥・避難・不動状態のらせんです。

不動状態=停止状態の長期化

不動状態は通常、数秒から1分程度しか継続しません。

これを自然終息と言うのですが、動物が持っている自発的能力です。

しかし、繰り返し脅かされ、なおかつ繰り返し拘束された場合は、不動状態が長期化します。

避難=抵抗しなかった自分自身への避難

戦う意志を見せなかったことへの自責感、弱さと無力感に関する自己嫌悪は、トラウマを抱えている人の共通点です。

これは、圧倒的な脅威に直面したときの不動化や解離を臆病と同じ類の弱さとして裁きがちな現代社会の問題と言えると思います。

主たる養育者との愛着関係が未形成の若年者は、より傷つきやすく、恥・解離・そして抑うつという確立した症状を発症する可能性が高くなります。

=本来は守り愛すべき人間からトラウマを受ける

家族や友人からイジメやレイプを受けた被害者は、わけのわからない無秩序な重荷に苦しめられることになります。

恥はまた、自分の身に起きた災難の原因は自分にあると捉える(避難)被害者の共通の誤解を助長するのです

ソマティック・エクスペリエンシング

ソマティック・エクスペリエンシングのトラウマ療法では、神経系に抱えたままの過剰なエネルギーを少しずつゆっくりと解放し、恐怖を分離します。

通常は一時的である不動反応の終了を促し、不動状態からの脱出をします。

野生動物が一瞬の身震いで完了することを、時間をかけてゆっくりするのです。

ラヴィーン博士は「癒しのプロセスは、劇的でなければないほど、またゆっくりと起これば起こるほどより効果的である」と仰っています。

いきなり不動状態から脱出をすると、トラウマの持つ莫大なエネルギーをコントロールできません。

恐怖は不動状態からの脱出を恐ろしいものにし、潜在的に暴力的にします。

自分自身の強烈な感覚や情動に対する恐怖で、自らを再び攻撃してしまい、これが再トラウマ化に繋がるのです。

そうならないためには、まずは自己調整力を身につけ、エネルギーを少しずつ放出することです。

ソマティック・エクスペリエンシングのセラピストの方が、カウンセリングしながら、うまく自己調整へ導いてくれるのでしょう。

詳しくは、SE Japan(ソマティック・エクスペリエンシング ジャパン)をご参照下さい。

そして〝今、ここにいる〟ことに注意を向けること。

これは、どんなセラピーでも言われることだと思います。

自分に合ったセラピーを受ける

ソマティック・エクスペリエンシングの本を読んで思ったのは、これは細胞の記憶にアプローチしているんだなということ。

生理学に基づいて説明がなされていて、なるほどなぁ〜と妙に納得。

ヒプノセラピーでも、トラウマ療法を行います。

ヒプノセラピーの場合は、潜在意識の記憶にアプローチします。

要は、トラウマの原因がどこから来ているかによって、受けるセラピーが変わると思います。

場合によっては、両方からのアプローチが必要なときもあるでしょう。

世の中には、薬物療法・カタルシス療法・認知行動療法など、その他様々なセラピーがあります。

個人的には、薬物療法はオススメしません。

先ほどの自己調整力もそうですが、人間は必ず自分で治す力を持っています。

薬を飲んだら治る、病院に通っていたら治る、この先生すごい先生だから言うことを聞いていたら治る。

他人に頼ってばかりの人は、自分で治す力がいつまでたっても身につかないと思います。

同じうつを発症しても、自分で治す人もいます。

同じような恐怖体験をしても、トラウマにならない人もいます。

おそらく、動物の本能的なエネルギーの解放を、本人が自覚しないまま自然に行っているのだと思います。

過酷な体験を自分の中で棚卸しをし、自然に解放しているのだと思います。

病気を治すには、自分の意思で治してみせると思う気持ちが一番大事です。

その気持ちこそが、一番の薬です。

 

参考図書

セラピスト向けの書籍ですが、トラウマに苦しんでいる人にもオススメです。

ただし、ちょっと・・・と言うか、かなり難しいかもしれせん。

翻訳の日本語がおかしいなと思う箇所もいくつかあります。

ですが、トラウマが発生するしくみを生理学的に知ることで、自分の体の中で何が起きているのかがわかります。

自分の体の状態を知ることは、トラウマを解放する手助けになると私は強く思います。

 

⬇︎読んだことはないですが、こちらも。

 

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